副腎疲労の食事治療

副腎疲労が悪化する最大の要因は食事かもしれません。食事を無視するとどんなに他の治療を頑張っても改善しません。食事は人生の楽しみの一つでもありますから「食事制限がストレスにならないようにすること」が重要です。

また、副腎疲労の重症時は、「1日のほとんどをベッドで過ごす」、「頭に霧がかかって何も考えられない」という症状が続きます。そんな時には高度な食事治療は難しい場合が多く、あえて「食事制限はしない」「何を食べてもよい」というのも一手です。

副腎疲労治療の大原則は「副腎に負担をかけない」ということをお忘れなく。
状況が改善してきたら、徐々に無理なく食事を変えていきましょう。

治りが悪い患者さんの例

41歳 女性 美容師

以前から朝が起きられないことがあったが、この2週間症状が増強した。
とにかく、身体が重く、体力がなく、疲れやすく、動悸が強い。時々心臓がギューッとする。腹部膨満感が強い。治療を開始して、3か月たってもなかなか症状が改善しない。

なかなか改善しない原因は食事にありました。

この患者さんがなかなか治らない理由を説明します。

やめるべき食事

1.砂糖、甘いものをやめる

血糖値の乱高下を引き起こし、副腎に負担をかけます。
副腎疲労の方は低血糖を起こしやすく、そのため甘いものが欲しくなります。

しかし、砂糖は急激に血糖値を上げるので、膵臓が反応して血糖値を下げる「インスリン」というホルモンを大量に分泌するため、反動で血糖値が急降下します。

血糖値が下がれば、副腎が即座に反応し「アドレナリン」という血糖値をあげるホルモンを出します。この血糖値のジェットコースター現象が副腎に休息を取らせないようにするのです。

下図は、75gのブドウ糖を摂ってもらい、その後血糖値とインスリン値を記録したものです。
血糖値が急上昇後に急降下している様子がよくわかります。

ジェットコースターのように乱高下をしている血糖値のパターン

ブドウ糖を摂って180分後の血糖値が57まで低下している

2.過度の糖質制限をしない

多すぎる糖分は副腎を疲れさせますが、反対に全く糖質を摂らないのも問題です。副腎疲労の疲弊期には糖質制限をするべきではありません。

人はエネルギーを作り出すために糖質が必要で、そのためには安定した血糖値を保つことが不可欠 です。健康な人が血糖値を保つ事ができるのは、食事を食べているからではなく「糖新生(とうしんせい)」のおかげです。

「糖新生」とは主に肝臓でグリコーゲンなどを分解して糖をつくることです。糖新生を起こすために一番重要なホルモンが 「コルチゾール」なのです。

副腎疲労では、「コルチゾール」の分泌がうまくいかないために「糖新生」機能が低下しています。だから、適度の糖質を含む食事で 血糖値の維持を補助する必要があります。
もちろん、砂糖のようなジェットコースター現象を引き起こす糖質は控えるべきです。

副腎疲労の女性(28歳)の血糖曲線

糖新生ができない状態なので血糖値が劇的に落ち込んでいます。
ヒトは血糖値が70を下回ると意識が低下することがあります。

3.カフェインをやめる

カフェインは直接に副腎を刺激して「アドレナリン」という興奮ホルモンを出させます。血糖値、血圧が上がるため、眠気覚ましとして使われるのですが、副腎を最も酷使するものであり、当然よくありません。

但し、1日にコーヒーを5,6杯も飲んでいる人は、徐々に量を減らしていってください。急にコーヒーを止めると、立ち上がれなくなったり、具合が悪くなったりする場合があります。

4.グルテン(小麦製品)をやめる

グルテンは小麦に含まれるたんぱく質です。小麦は世界的に遺伝子組み換えが進み、以前の小麦とは違った作物になりつつあります。

グルテンは急激に血糖値を上げます。実は、チョコレートよりも小麦の方が血糖値を急激に上げやすいのです。またグルテンは腸を傷つける場合もあります。

グルテンと乳製品は腸を傷つけることがあるので、副腎疲労治療の際は避けた方がうまく行くことが多いのです。副腎疲労と腸内環境は密接につながっています。
(詳しくはこちら)
・副腎疲労患者150名に腸内環境検査を行った結果

それでもパンがやめられない、パン屋さんの前を素通りできないという人は多いですが、その理由は、未消化のグルテンが、脳にモルヒネ(麻薬)様の効果を及ぼすからです。

タンパク質グルテンは、消化酵素により「グリアドーフィン」というペプチドを経て、アミノ酸まで分解され、腸管から吸収されます。しかし、腸内環境の乱れがあると、通常は吸収されない「グリアドーフィン」の状態で吸収されてしまいます。

このペプチドは、構造がオピオイド(麻薬様物質)と非常に似ているため、脳内のオピオイド受容体と反応してしまうのです。

つまり、腸内環境が悪い人にとって、グルテンには中毒性があるのです。その場合徐々に量を減らすことを考えてください。腸内環境が整って来れば、多少のグルテンは摂っても大丈夫になることが多いです。

5.乳製品をやめる

乳製品の是非については多くの議論がありますが、副腎疲労の治療においては、乳製品は「百害あって一利なし」です。

一番の理由は大量のカルシウムが、体内のカルシウム・マグネシウムバランスを崩すことです。このバランスを保つために理想的なカルシウムとマグネシウムの摂取量比率は1:1ですが、牛乳のそれは11:1とカルシウムが過剰に多くなっています。

マグネシウムは副腎疲労治療サプリのキーミネラルです。そのマグネシウムを十分に働かせるためには、多すぎるカルシウムが邪魔になります。

ここで誤解のないように言っておきますが、体にとってカルシウムは非常に大切なものです。但し、カルシウムは体の中でも一部に局在するようにポンプ機能が働いています。その局在のバランスが崩れる事が非常に問題になります。マグネシウムが入っていないカルシウムだけのサプリメントもやめてください。

副腎疲労の方の合併症に多い「繊維筋痛症」を治療するカギもこのカルシウム・マグネシウムバランスです。また、乳製品のたん白質カゼインも同様にモルヒネ様物質として、牛乳依存を引き起こすことがあります。

ただし、何事にも例外はあります。もし相性の良いヨーグルトがあり、それを食べることで明らかに腸内環境が改善するなら、是非摂ってください。

食事全般に言えることですが、「自分で食べて調子がよくなるもの、悪くなるものを見極めていく」ことが、誰の食事アドバイスよりも重要です。

6.加工食品をやめる

加工食品の問題もいろいろありますが、一つは保存料などの添加物です。
保存料というのは、言い換えれば殺菌剤で、これが腸内環境を破壊します。
また、糖分がかなり入っている場合も多いのです。

7.アレルギーの出る食材を一時的にやめる

アレルギーによって引き起こされる症状を抑えるために、副腎が酷使されます。
副腎を休ませるために、アレルギーを起こす食品を控えることは重要です。

アレルギーの症状は「喘息」や「じんましん」だけではない事に注意して下さい。食べて具合が悪い症状が出るものは、すべてアレルギー食品です。例えば、頭痛、うつ症状、胃が重い、体がだるい、動悸がするなどの症状が出たら、アレルギーかも知れません。

食物アレルギーをどうやって見分けるか

一般的な病院で行う即時型アレルギー検査(IgE検査)や、代替医療の世界で多く行われている遅延型食物アレルギー検査(IgG検査)で陽性にならないからといってアレルギーを起こす食品ではないと考えるのは早計です。

また、IgG検査は食物を制限するための検査ではなく、腸管バリア機能を評価するための検査であり、腸内環境が悪い人では多くの食物が陽性になります。それに従うと食べられる物がなくなってしまいます。

カナダや日本のアレルギー臨床免疫学会も、「遅延型食物アレルギー検査の結果が間違って理解され、食物制限をした子供が発育障害を起こすこと」に懸念を表明しています。

検査会社によって結果のばらつきがあります。検査結果を鵜呑みにしないことが大切です。

では、どうやってアレルギーのある食事を見分けたらよいでしょうか。
一番わかりやすいのは、疑わしい食事を2週間やめてみることです。

たとえアレルギーを起こす食品であっても、普段から食べ続けていると症状に慣れが生じるためにアレルギー症状を自覚しにくくなります。

そこで、疑わしいものを2週間やめて、慣れてしまった自分の感覚をリセットします。
そうしたところで、それを2週間ぶりに食べてみると、症状がわかりすいのです。(私は卵でやってみました。 2か月ぶりに生卵を2個食べたら、翌日の胃が重い事といったら!)

他には疑わしい食べ物を食べてみて、食前と15分、30分後の脈拍を比べてみるコカテストという方法もありますが、副腎のアドレナリン分泌を利用する方法なので、副腎疲労の重症時には反応が弱いかもしれません。

8.タンパク質を摂りすぎない

栄養療法で高たん白、低糖質の食事指導を受けられている方がいます。食事だけでは足りず、さらにプロテインでたんぱくを補給しているかたもいらっしゃいますが、多くの人にとってそれほど多くのたんぱく質は必要ありません。

強い炎症などを伴っていない限り、副腎疲労は消耗性疾患ではなく、代謝が低下している方が多いのです。むしろ、自分の酵素を使いすぎないように消化酵素を足してあげたほうが良いくらいです。

補足 副腎ホルモン「コルチゾール」はタンパクの異化(体内での分解)を亢進させます。ストレスに対応できている対応期にはタンパク質の需要も増加しています。しかし、副腎疲労で苦しんでいる人のほとんどは、疲弊期でありコルチゾールはあまり出ていません。

9.炎症を起こす食事をやめる

「栄養療法が効かない原因」の大きな原因が「炎症」と「ストレス」です。
食事、腸内環境、歯周疾患など意外なものが炎症の原因になっています。
このうちだれもが気を付けているのに、ついないがしろになりがちな要素が「食事」です。

人の細胞膜では、 肉に多いアラキドン酸からはプロスタグランジンE2、魚に多いエイコサペンタエン酸からはプロスタグランジンE3がそれぞれ作られます。プロスタグランジンE2の作用によって「痛み、熱、腫れ」など炎症が起き、プロスタグランジンE3にはこの炎症を抑える作用があります。

つまり、体が炎症を起こしやすいかどうかは、細胞膜の中の「アラキドン酸」と「エイコサペンタエン酸」の比率に大きく左右されるということになります。だから、食事内容を変えることで、体内の炎症は亢進したり、抑制されたりするわけです。

そこで、炎症を抑えるためにEPA(エイコサペンタエン酸)をサプリメントで大量に摂取して、細胞膜の脂肪酸の比率を変化させることは有効な治療法です。

しかし、60兆個の細胞の細胞膜に影響させるために摂らなければいけない量は膨大で、1日に1500~2000mgとも言われます。これは青魚何十匹分という量で、食事から摂るのは事実上不可能です。だから栄養素を濃縮したサプリメントという形で摂るのです。

但し、いくらサプリメントで魚の脂を摂っても、食事で肉の脂を摂りすぎると効果が半減します。炎症を抑える効果は、細胞膜の脂肪酸の比率によって変わるからです。サプリメントによる抗炎症治療には、炎症を起こしにくい食事が不可欠です。

食事を調整できる人とできない人ははっきり分かれます。食事がうまくいく人は、知識を持っている人です。肉やグルテンがどのような機序で細胞膜や腸に働きかけ、炎症を起こすかを知っています。また、実際にどのような食事をとればいいのか、どんな食材を買ってきてどう調理すればいいのかも知っています。

栄養療法は、病院に行って治療してもらうというよりは、自分で自分を律し、知識に基づいて治療を組み立てて行くという工程が重要です。

私の師匠の一人、リオルダン先生は「自分で自分の主治医になること」が重要と言っていました。もしよかったら、食事についていろいろ勉強してみてください。

体の炎症を抑える仕組みに関しては、「病気がいやなら油を変えなさい」という本が秀逸です。また、「ジョコビッチの生まれ変わる食事」は、どん底から1年半でテニスの王者に君臨したジョコビッチ氏の経験を通して、食事を変えることの劇的な効果について述べられており、食事療法のやる気が出てくるいい本だと思います。

他にもいい本がたくさんあると思いますので、是非探してみてください。

食べるべき食事

和食がお勧め

副腎疲労の患者の多くは、長年のストレスにより特にミネラルが消耗しています。また、腸内環境が悪化しており、食物繊維を積極的にとることも勧められます。
肉食はアラキドン酸が多い事による炎症の問題、カゼイン・グルテンの調整が難しい事などから摂取に気を付ける必要があります。

お勧めは「まごわやさしい」食です。

  • ま(まめ)=豆類
  • ご(ごま)=種実類
  • わ(わかめ)=海藻類
  • や(やさい)=緑黄色野菜、淡色野菜、根菜
  • さ(さかな)=魚介類
  • し(しいたけ)=きのこ類
  • い(いも)=いも類

各頭文字に該当する食材を食事にとりいれてください。

副腎疲労に必要なビタミン、ミネラル類、腸内環境改善に必要な繊維なども摂れる理想的な食事です。但し、水銀をはじめとした重金属汚染の問題があるため、クジラ、マグロなど大型魚は避けてください。

糖質の摂取を病期によって変える

2.過度の糖質制限をしないにて書きましたが、副腎疲労の疲弊期には極端な糖質制限をしないことが重要です。

それに対して、腸内環境異常を治療するとき、特にカンジタを除菌する際にはカンジタ増殖のカギになる糖質を制限した方がうまくいく場合があります。

この両者の治療では糖質の摂り方を少し変える必要があります。

「 自分の病気が改善しない、治療効果が頭打ちだ 」
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宮澤医院 根本治療外来では、そのような方々の病気の本当の原因を探し出し、それに対する根本治療を提案しています。

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