自己判断でグルテンフリー食事法を行う前にしておいたほうがいいこと

グルテンフリー・ダイエットを始める人が増えています。小麦を控えめにしたら意外と調子が良かったため続けている人もいるし、ダイエット効果があると聞いてはじめてみる人も多いようです。しかし、グルテンフリー・ダイエットは痩せるための方法ではなく、元々は「グルテン依存性疾患」に対する医学的根拠に基づいた治療法です。

当院では治療の一環としてグルテンフリー食事療法を導入しており、これまで数百人の方に指導をしていますが、正しく行うことが困難なために調子を崩す人も少なくありません。3種類あるグルテン関連疾患はそれぞれグルテンの制限の仕方が違います。安易にグルテンフリーを中途半端に行うと病気が進行する場合があります。

グルテンフリー食事で調子が良くなる方は是非検査を受けて自分がどこに当てはまるのかを知ってください。

グルテン制限を厳しく行うかは病名によって決める

「グルテンを制限すると体調がよくなり、再開すると悪化する」症状をもつ疾患群をグルテン依存性疾患といいます。

グルテン依存性疾患は大きく3種類に別れますが、これらは原因も機序も、そしてグルテン制限の厳しさも異なります。これを見分けて、それにあった正しいグルテンフリー・ダイエットをとりいれることが大切です。

セリアック病

グルテンに対する免疫反応が小腸粘膜を傷つけるのがセリアック病です。免疫が自分自身を攻撃する自己免疫疾患です。疾患を持つ人の確率は150人に1人で遺伝性があります。

この病気の原因発見のきっかけは戦争でした。第二次大戦中にオランダが穀物不足に陥ったときにセリアック病の子供の死亡率が劇的に下がりました。それでパンがセリアック病の原因と特定されたのです。その後、小麦に含まれるたんぱく質のグルテンに焦点が絞られるようになりました。

症状としては、慢性の下痢や便秘などの他、粘膜が委縮して強い吸収不良がおきるため、鉄欠乏性貧血や骨粗鬆症なども起こします。血液中の組織トランスグルタミナーゼ抗体の上昇が特徴的な検査所見です。自己免疫疾患なので1型糖尿病,リウマチ、多発性硬化症の人はぜひチェックすべき病態でもあります。原則として生涯グルテンフリーの食生活を続ける必要があります。

小麦アレルギー

一般的には小麦アレルギーを起こしやすいのは子供です。小麦のタンパク(グルテンやグリアジン)に対して免疫が作動し抗体を作ります。次にタンパクを摂取した時に抗体が反応してヒスタミンが放出されアレルギー症状が生じます。症状には蕁麻疹、嘔吐または下痢、鼻水、頭痛などがあり、時にはアナフィラキシーを引き起こし、体をショックに陥れることもあります。

免疫グロブリンIgEによる免疫反応が一般的で、その抗体を測定することで診断します。自然治癒するのも特徴で、乳児期に発症したアレルギーは12歳までに80%軽快します。グルテンフリー・ダイエットを行う期間は平均で6年間です。

非セリアック・グルテン過敏症(NCGS)

「セリアック病でなくとも、グルテンを食べると症状が悪化する人々がいる」という報告が近年相次いています。グルテンに対する過敏症状があるのに、上述の二疾患には当てはまらないのです。検査をしても抗体の上昇が見られず小腸の絨毛も損傷されません。これは2012年にセリアック病との混乱を避けるために、非セリアック・グルテン過敏症と命名されました。

現在、多くの患者さんが自己診断でグルテンフリー食を開始しているため、詳細な発症率は不明ですが、発生率はセリアック病や小麦アレルギーよりも高いとの報告があります。

特異的な診断マーカーがないため、診断はまず上記二疾患を除外する事が必要です。次に食物による症状の誘発試験を行います。グルテンを含まない食事を少なくとも3週間行い、その後に誘発検査をする事が推奨されています。上記二疾患とのもう一つの大きな違いは、完全なグルテンフリーでなく、低グルテンで対応できる人も多いことです。

グルテン依存性疾患の比較

病名セリアック病非セリアック・グルテン過敏症小麦アレルギー
発症率1%0.6-13%1%
遺伝要因HLA異常95%HLA異常50%アトピー素因
原因グルテンへの免疫の混乱不明IgE依存性反応
血中抗体tTG,EMA,など特異的なものなし小麦に対するIgE
腸の組織萎縮ありなしおそらくあり
症状腸および腸外症状腸および腸外症状腸および腸外症状
グルテンフリー期間一生不明平均6年

自己判断の危険性

セリアック病は吸収不良症候群という腸の吸収が妨げられる難病の一つとして定義されています。日本での発症率は0.7%(140人にひとり、日本セリアック病研究会のデータ)で決して低くはありません。セリアック病患者の6~8%では腸管リンパ腫が発生し、他の消化管癌(例,食道癌,中咽頭癌,小腸腺癌)の発生率も上昇します。

グルテン除去食をキッチリ行う事で,悪性腫瘍のリスクが有意に減少する可能性があるのです。残念ながら、自己流のグルテン・ダイエットは厳密にはグルテン・フリーになっていない人も多く、それは疾患の進行を早めます。また、セリアック病診断の決め手になる血清中抗組織トランスグルタミナーゼ抗体もグルテンフリー食事法によって偽陰性を示すこともあります。

グルテンフリー食事法は、時にはセリアック病を覆い隠し発見を遅らせてしまうのです。

過敏性腸炎の人は要注意

過敏性腸炎とすでに診断されている人の中にはグルテンフリー食事法を試してうまくいった方が多いと思います。roccioらによると、過敏性腸炎の症状をもつ患者さんの30%は小麦の敏感性に苦しんでいます。グルテンフリーは過敏性腸炎の症状を改善する可能性があるのです。

グルテン負荷による腸の症状が似ているため、過敏性腸炎と誤診されたセリアック病患者はかなりの数に上ることがわかっています。これを受けて、英国、米国消化器学会は特に下痢型混合型の過敏性腸炎患者全員にセリアック病を除外するための検査をすべきだと主張しています。

まずは検査を行いましょう

・グルテンフリー食事法を試してみて調子が良いと感じた場合
・半年以上にわたって腹痛や腹部不快感が続いている場合
・リウマチや一型糖尿病、多発性硬化症など自己免疫病を持っている場合

などは特に「自分がグルテン関連疾患のどこにあてはまるのか」を決めるべき時です。検査は、自分のライフスタイルと20年後の健康状態に貢献する情報を与えてくれるでしょう。

ドクターズ・データ社のセリアックパネルは、1回の検査でセリアック病と小麦アレルギーの両者を調べることができる優れものです。

まとめ

グルテン依存性疾患には3種類ありますが、血液検査およびグルテン制限食後のグルテン負荷試験でどれかを突き止める事が出来ます。

「グルテンがきついなあ」と感じたら早めに検査を行い、自分がグルテンとどう付き合っていくべきかを決めてください。

検査の詳細については、クリニックまでご相談ください。


(参考文献)

・Non celiac gluten sensitivity – A new disease with gluten intolerance Clinical Nutrition Volume 34, Issue 2, April 2015, Pages 189-194

・What is the best histopathological classification for celiac disease? Does it matter?Gastroenterol Hepatol Bed Bench. 2015 Autumn; 8(4): 239–243.

・Diagnosis of Non-Celiac Gluten Sensitivity (NCGS): The Salerno Experts’ Criteria.Nutrients. 2015 Jun 18;7(6):4966-77

・MSDマニュアルプロフェッショナル版/セリアック病


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